湯けむりに溶ける夜
旅館の部屋に響くのは、湿った吐息と肉がぶつかる艶やかな水音だった。畳の上に敷かれた白い布団が軋み、夫・悠斗の腰が激しく打ちつけられるたび、私の身体は小刻みに跳ねた。
「真愛……っ、イクぞ……っ!」
荒い息が交錯し、汗が滴り、肌と肌の間で熱が弾けた。彼のペニスが奥まで突き上げるたび、膣の内壁がぎゅっと収縮して、ビリビリとした快感が腹の奥を突き抜ける。シーツを掴む指先に力がこもり、私は背中を反り返らせた。
どくん……どくん……と、悠斗の精が熱く注ぎ込まれていく。奥深くで混ざり合う粘ついた音が、静寂の中でいやに響いた。彼の身体が私の上で動きを止め、荒い息を吐きながら肩に額を預ける。
「はぁ……やっぱり、お前の身体は最高だな」
その言葉と同時に、彼の重みがふっと軽くなった。悠斗は満足げな吐息を残して横に転がり、あっという間に寝息を立て始める。精の余韻がまだ膣の奥にじんわり残る中、私は天井を見つめたまま小さく息を吐いた。
(また……いつもみたいに、終わったら背を向けるのね)
熱く濡れた下腹部に残る粘り気を感じながら、私はそっと布団を抜け出した。冷たい空気が肌を撫で、体温の差で乳首が小さく硬くなる。浴衣を羽織って帯を結び、音を立てぬように部屋を出る。
渡り廊下を抜けると、夜風が硫黄の香りを運んできた。木々の間から覗く月明かりが、露天風呂へと続く石畳を白く照らしている。湯けむりがゆらゆらと立ち昇り、静かな水音が心を落ち着かせた。
脱衣所で浴衣を脱ぎ、私は洗い場に腰を下ろした。桶にぬるま湯を汲み、首筋から胸元へと流す。悠斗にしゃぶりつかれた乳房、膣の奥に残された精を、ぬるま湯で丁寧に洗い流した。
身を清めた後、湯に足を沈めた瞬間、じんわりとした温もりが下半身を包み込む。湯面が波打ち、さっきまで冷えていた膣の奥がじわりと緩むのを感じた。ふと、湯けむりの向こう側に人影が浮かぶ。
「こんな時間に、一人か?」
低く落ち着いた声。驚いて顔を上げると、そこには義父・洋介の姿があった。月光を受けたその身体は、年齢を感じさせないほど引き締まっていて、濡れた肩が艶やかに光っていた。
「お義父さん……まだお風呂に?」
「少し考え事をしていてな。夜の湯は格別だ」
洋介の声は穏やかで、しかしどこか奥に熱を含んでいるように聞こえた。彼が湯に手を滑らせるたび、筋張った前腕に水滴が伝い落ちていく。
「お前も、日頃の疲れを癒すといい。……夫婦生活も、大変だろう?」
「えっ……?」
一瞬で心臓が跳ねた。目を逸らしながら、どうにか笑みを作る。
「……まあ、普通ですよ」
「普通、か。それは、満たされているということか?」
喉の奥がつまるような感覚。湯気が顔にかかって息がこもる。悠斗との行為を思い出すたび、あの激しさの裏に潜む孤独が胸の奥で疼く。
「……悠斗は、情熱的です。だから……」
「情熱と満たされることは、同じではないぞ」
洋介の声は静かに沈み、湯面に波紋を描いた。月明かりの下、その瞳がまっすぐに私を射抜く。まるで心の奥を覗かれているようで、息を呑む。
「女の身体はな、じっくりと味わうものだ。焦らず、少しずつ……触れ、確かめ、溶かしていく。そうして初めて、本当の快楽を知るんだ。」
その言葉が、湯の中でゆっくりと私の中に沈み込んでいった。身体の奥がじわりと熱を帯び、胸の中心がドクンと跳ねる。湯気の向こうの洋介の視線が、静かに私を捕らえて離さなかった。