戸口の雪音
戸を叩く音で、私は針を止めた。
夜更けの山家に、客など来るはずがない。まして今夜は、吹雪が林を白く呑み、軒先の鈴まで凍りつかせていた。囲炉裏の火は静かに赤く、鍋の中では乳粥がくつり、と泡を抱いている。乳脂の甘い匂いが台所の梁へまとわりつき、濡れた薪の煙と混ざって、冬の家だけが持つ重たい温もりを作っていた。
妹の美緒が、鍋の前で顔を上げる。
「姉さん、今の……」
「聞こえた」
私は針を針山へ戻し、胸元の布を整えた。張りを帯びた乳房が、エプロンの内側でゆるく揺れる。夜になると、乳腺はいつも疼いた。吹雪の日はなおさらだった。閉ざされた家に火があり、湯気があり、女ふたりの呼吸だけが満ちていると、身体は外の冷たさへ逆らうように、内側から乳を作り続ける。
また戸が鳴った。
こん、こん。
弱い音だった。助けを求める人間の手は、威張らない。叩くというより、倒れ込む前に知らせようとしている響きだった。
(人か、獣か、それとも山が連れてきた厄介か)
私は行灯を手に取り、土間へ下りた。美緒が背後で鍋の火を弱める。姉妹だけで暮らす家では、戸を開ける一瞬にも覚悟がいる。雪に埋もれた村で、女だけの搾乳小屋を守っているとなれば、なおさらだ。
引き戸を細く開けた途端、吹雪が白い息を吐いて入り込んできた。
その中に男が立っていた。
髪も肩も雪にまみれ、旅装の外套は凍りかけている。頬は冷えに削られ、唇は血の気を失っていた。それでも目だけは、火を見つけた獣のようにこちらを捉えて離さない。
「すみません……道に、迷って」
声は掠れていた。若い。けれど子どもではない。旅で削られた男の疲れと、冬山へ踏み入った者だけが持つ固さが、肩や指先に残っていた。
私は戸をさらに開ける。
「入って。そこで倒れられたら、朝までに凍ります」
男は礼を言いかけたが、うまく言葉にならなかった。土間へ入った瞬間、膝が折れかける。私は片腕を取った。外套越しでも、身体の冷えが伝わってくる。
「美緒、湯を。それから替えの布も」
「うん」
妹はすぐに動いた。濡れた手袋を外し、外套を受け取り、男を囲炉裏端へ座らせる。雪解けの水が衣服から床へ落ち、黒い染みを広げていた。あのまま火のそばに置けば、身体だけでなく家の中まで冷やす。
「その服、脱いで」
男は顔を上げた。
「え……」
「濡れた布を着たままでは、乳粥を食べても温まりません。上着もズボンも、靴下も。干しておけば朝には乾く」
命を助けるための言葉だった。けれど、男の頬へ羞恥の赤が差すのを見た時、私の胸の奥で別の熱が小さく灯った。
彼はためらいながらも頷いた。凍えた指で釦を外し、濡れた上着を脱ぐ。重く湿ったシャツ、泥を吸ったズボン、冷えきった靴下。美緒がそれらを一枚ずつ受け取り、梁の下に渡した縄へ広げていった。衣服から落ちる水滴が、囲炉裏の火へ近い床板で細く湯気を立てる。
最後に残ったのは、薄手のTシャツと下着のパンツだけだった。
Tシャツは肌へ貼りつき、胸の形と肋の線をうっすら浮かべている。パンツの布も頼りなく、腰骨から太腿の付け根までを辛うじて覆っているだけだった。私は厚い毛布を彼の肩へ掛けたが、膝までは覆わなかった。火を遮るより、まず身体そのものを温めたかった。
「名前は」
「拓実です」
「私は遙香。こっちは妹の美緒。今夜はここで休んでいきなさい」
拓実さんは私を見上げ、恐縮したように頭を下げる。
「助かります。明るくなったら、すぐに出ます」
その律儀さに、私は唇の端をゆるめた。
「明るくなっても、山が許すとは限らないわ」
美緒が湯を差し出した。拓実さんは両手で椀を包み、ゆっくり飲む。指が震えていた。私はその震えを見ながら、胸の奥で乳が脈を打つのを感じた。
山は時々、こちらの望みを知らないふりで叶える。
私は鍋の蓋を開けた。
白い湯気が立ちのぼる。
粥の中へ溶け込んだ乳は、火を受けて柔らかく艶めいていた。
「乳粥を食べて。胃が受けつけるなら、身体は戻ります」
拓実さんは椀を受け取った。
その瞬間、私の指と彼の指が触れた。
冷たい。
けれど、その冷たさの底に、まだ消えていない熱がある。
私はそれを、なぜか手放しがたく思った。
乳粥の火
拓実さんは、最初のひと匙を慎重に口へ運んだ。
塩気を含んだ乳粥が舌へ乗った途端、彼の喉がゆっくり動く。目元の張りがほどけ、肩から力が抜けた。私はその変化を見逃さなかった。食べ物で人が戻ってくる瞬間には、どこか官能に近い静けさがある。命が、喉から下へ降りていくのだ。
「うまい……」
掠れた声が囲炉裏の火へ落ちた。
美緒が笑う。
「山の冬は、これがないと越せないんです」
「牛の乳ですか」
拓実さんの問いに、美緒は私を見た。
私は椀へもう一杯、粥を注いだ。
「牛の乳も使う。でも、これは家の乳」
「家の乳……」
彼は意味を測りかねた顔をした。私はそこで説明を止める。知らないまま飲む方が、味は深く残る。
囲炉裏の火が、ぱちり、と爆ぜた。
橙色の光が彼の濡れた睫毛を照らす。頬に残った雪水が細い筋になり、顎へ落ちた。濡れた外衣を脱いだ身体は想像よりしなやかで、旅の疲労に痩せていながら、芯には強い骨格がある。薄いTシャツの下で胸が上下し、下着のパンツ一枚だけの腰まわりには、若い男の熱がまだ眠っていた。
美緒は梁の下で衣服を広げている。ズボンの裾から水が滴り、靴下からは白い湯気が立った。濡れた布が火に乾かされていく匂いの奥で、乳粥の甘い香りだけが柔らかく残っている。
「どこから来たの」
私は尋ねた。
拓実さんは椀を置き、息を整えた。
「三日前に麓の町を出ました。山向こうの集落をいくつか回って、冬の暮らしを記録するつもりで」
「物書き?」
「民俗の聞き書きです。大学を出たあと、街で働いていたんですが……山の保存食や祭りを調べていて、この辺りに独特の乳粥があると聞きました」
美緒の手が、濡れたシャツを縄へ掛けたところで止まった。
「それで、この吹雪の中を?」
「案内してくれる人が、ひとつ前の村で急に戻れと言って。吊り橋が落ちている、道が塞がる、と。でも地図では迂回路があったんです」
「古い地図ね」
「ええ。気づいた時には、足跡も消えていました」
彼は苦く笑った。
「灯りが見えなければ、たぶん今ごろ……」
言葉が途切れる。
私は椀を彼の手へ戻した。
「食べなさい。話は温まってからでいい」
彼は素直に頷き、また粥を食べた。匙が白い粥を掬うたび、湯気が彼の顔を包む。乳の匂いを吸い込みながら、彼の呼吸が深くなっていく。
その様子を見ていると、私の乳房が奥からじんわり疼いた。
誰かに飲ませるために作った乳ではない。冬を越すため、妹と私が守ってきた乳だ。それなのに、彼が喉を鳴らすたび、身体は勝手に応えてしまう。乳首の先が布の内側で硬くなり、乳輪の奥に熱が集まる。
(この人を、うちの火へ沈めたい)
その考えは不意に生まれた。けれど、生まれた瞬間から、昔からそこにあった欲のように馴染んだ。
拓実さんは空になった椀を見つめた。
「不思議です。甘いのに、腹の底が熱くなる」
「乳粥は、身体を家へ戻す食べ物なの」
私は椀を受け取る。
「今夜、あなたの旅はここで止めなさい」
彼は火の向こうから私を見た。
「明日、道が開けば……」
「明日は、山が決める」
美緒が鍋を下ろした。姉妹の間に、言葉にしない合図が流れる。
彼はその沈黙を読めないまま、目を伏せた。疲労がまぶたを重くしている。だが、私の目には別のものも映っていた。乳粥を飲んだ身体が温まり、男の血が戻ってくる。その熱は腹だけに留まらない。下着のパンツ一枚の奥で、彼の輪郭がゆっくり変わり始めていた。
布が持ち上がる。
隠そうとして膝を寄せるほど、形はかえって明らかになった。亀頭の位置、陰茎の長さ、根元から押し出される熱。薄い布は礼儀のために残っているだけで、男としての反応を隠すには頼りなかった。
美緒が衣服を干す手を止め、私を見る。
見てしまったのは私だけではない。
拓実さんは気づいていない。あるいは気づいていて、気づかないふりをしている。私は火へ薪を足し、ゆっくり息を吐いた。
見ないふりは、許しの形にもなる。
眠りの前の約束
食後、私は拓実さんを納屋の奥へ案内した。
濡れた衣服はまだ梁の下で湯気を上げている。乾くまでは着せられない。拓実さんは薄手のTシャツと下着のパンツのまま、肩から厚い毛布を被っていた。歩くたび毛布の裾が揺れ、囲炉裏で温まった肌と、さっき私たちが見てしまった男の形を思い出させる。
母屋よりも小さな搾乳小屋は、外から見れば古びた物置にすぎない。だが中には干し草を厚く敷き、毛布を重ね、壁際には保存瓶と搾乳桶を整えてある。牛の蹄音はない。獣の臭いもない。あるのは藁、乳脂、乾いた布、女の肌から離れきらない微かな匂いだけだった。
拓実さんは入口で足を止めた。
「ここが、搾乳小屋ですか」
「ええ」
「牛舎は別に?」
「明日の朝、見ればわかる」
私は寝床の毛布を広げた。美緒が火鉢を運び入れ、戸の隙間へ布を詰める。外の風はなお唸っていたが、小屋の内側には母屋とは違う湿った温みがある。壁に掛けた女物の着替えを見て、拓実さんは視線を逸らした。
その礼儀正しさが、また胸を張らせる。
「昼のあいだは、ここから出ないで」
私は言った。
拓実さんはすぐに顔を上げた。
「なぜです」
「村の共同小屋に知られると厄介なの。よそ者の男が、私たちだけの小屋にいたとなれば、噂だけでは済まない」
美緒が火鉢の灰をならす。
「山が落ち着くまで、ここに隠れていた方が安全です」
「迷惑をかけます」
「もう掛かってる」
私がそう言うと、彼は困ったように笑った。
「では、せめて何か手伝います」
その言葉に、美緒が肩を揺らした。笑いを堪えているのがわかる。
「明日、お願いするかも」
私は毛布を彼の肩へ掛け直した。Tシャツの薄い胸元に指が触れる。彼はわずかに身を固くしたが、逃げなかった。
「眠りなさい。朝は早いから」
「遙香さん。助けてくれて、ありがとうございます」
まっすぐな礼だった。
私は頷いた。礼を受け取るのは得意ではない。こちらにも望みがある時は、なおさら。
小屋を出る前、私は行灯の火を絞った。薄闇の中で、拓実さんが毛布へ横たわる。Tシャツとパンツだけの身体を隠すように、彼は毛布を胸元まで引き上げた。けれど囲炉裏で戻った男の熱は、布の奥でまだ完全には収まっていない。乳粥の熱と疲れに引かれ、彼の呼吸はすぐに深くなった。
美緒と母屋へ戻る途中、妹が私の袖を引いた。
「姉さん、胸、張ってる」
「あなたもでしょう」
「うん。あの人、来た途端に変なの。さっきの……見た?」
「見たわ」
短く答えるだけで、口の中が熱くなった。薄いパンツの奥で押し上がっていた陰茎の形。隠そうとする膝。火の赤を受けて、布越しに浮かんだ男の輪郭。
思い出しただけで、乳房の奥が強く疼いた。
母屋へ戻ると、私たちはいったん日常の手順へ戻った。
美緒は干していた衣服の位置を直し、私は炉の火を細く落とす。鍋を洗い、明日の水を汲み、窓の隙間へ布を詰める。いつもの夜と同じ動きのはずなのに、胸の奥だけが落ち着かなかった。
小屋で眠っている拓実さんのことを、考えないようにするほど、薄いパンツの奥で押し上がっていた陰茎の輪郭が浮かんでくる。
寝室へ入ると、美緒が何も言わずに寝台の端へ腰を下ろした。
「明日の準備、しよう」
「ええ」
翌朝の搾乳に備えて、互いの乳腺をほぐすのは珍しいことではない。冬の夜、乳が固く張ったまま眠れば、朝には痛みで目が覚める。だから私たちは、寝る前に胸を温め、乳房を揉み、乳首の先まで流れを整えておく。
胸布を解き、下着を外す。
美緒もシャツを床へ落とした。
私たちは、いつものように全裸になった。寝室の灯りは低く、裸の肩も、乳房も、腹も、薄い蜂蜜色の陰影を帯びている。私は美緒の背に手を置き、妹は私の腰へ指を添えた。肌と肌が触れ合うだけで、今夜は息の落ち方が違った。
いつもなら、これは作業だった。
乳房の張りを見て、乳腺のこわばりを解き、翌日のために身体を整えるだけの静かな時間。
けれど今夜は、指が乳首へ近づくたび、彼の姿が二人の沈黙へ混じった。毛布の下に隠された男の身体。Tシャツ越しに息づく胸。薄い布では隠しきれなかった、ペニスの熱。
「姉さん、また硬くなってる」
美緒が私の乳首を指先で摘まむ。
――くにゅ……。
小さな刺激が、乳房の奥だけではなく、膣の奥まで落ちた。
「あなたもよ」
私は美緒の乳房を両手で包み、根元からゆっくり押し上げる。張った乳肉が掌へ沈み、乳首の先へ白い滴が膨らんだ。
――ぽと……。
寝台の布へ落ちた乳が、丸い染みを作る。
いつもの量ではなかった。
美緒の乳首からも、すぐに乳が滲み、次の瞬間、細い線になって飛んだ。
――ピュッ。
「出た……」
妹の声が震える。
私は答えようとして、声を失った。美緒の指が私の乳首を捻り、もう片方の手が腹を伝って下へ落ちていく。ラビアの内側には、すでに愛液が溢れていた。まだ男に触れられてもいない。それなのに身体は、彼が小屋にいるというだけで、奥から濡れている。
「姉さん、下も……」
「言わないで」
「私も、同じ」
美緒の太腿の内側にも、濡れた光が伝っていた。
私は妹を抱き寄せた。乳房同士が押し合い、乳首が擦れる。互いの乳と汗が肌へ広がり、寝台の上に甘い匂いが満ちていった。これは明日のためのマッサージだったはずなのに、もう手順では止められない。
美緒の口が私の乳首を含む。
――ちゅ……。
吸われた瞬間、腰が震えた。
「ん……っ」
私は妹の乳房を揉み返し、乳首を舌で濡らす。乳が舌へ広がり、甘い熱が喉を滑る。その味の奥に、まだ触れていない拓実さんの匂いを探してしまう自分がいた。
指が互いの下腹へ伸びる。
愛液で濡れたラビアをなぞり、クリトリスへ触れた途端、美緒の身体が弓なりにしなった。
「姉さん……だめ、今夜は……」
「いつものマッサージでしょう」
「違う……こんなの、いつもと違う……」
その声が、私の理性をほどいた。
乳房を揉む。乳首を吸う。濡れた指で互いの奥を浅く探り、逃げ場のない快感を重ねていく。乳は寝台へ散り、愛液は腿を伝い、身体のどこに触れても、彼の存在がそこに紛れ込んでいるようだった。
美緒が先に果てた。
「ぁ……んっ、姉さん……!」
膣口が震え、愛液が指を濡らす。妹の乳房から乳が弾け、私の胸へ白く散った。
その熱を受けた瞬間、私も耐えきれなかった。
クリトリスを擦られ、乳首を吸われ、身体の奥が白くほどける。喉から漏れた声は、自分のものとは思えないほど甘かった。
「ん……ぁ……っ」
果てたあと、私たちはしばらく裸のまま抱き合っていた。
寝室の空気は乳と愛液の匂いで満ち、寝台の布は温かく湿っている。美緒の呼吸が私の胸へ重なり、やがて少しずつ静かになった。
「明日、あの人に搾ってもらったら……どうなるんだろう」
妹の声は、眠りの縁でほどけていた。
「明日、わかるわ」
私はそう答え、美緒の髪を撫でた。
遠くの小屋で、拓実さんはまだ眠っている。
触れていないのに、もう私たちは変わり始めていた。
乳房の奥に残る疼きと、膣の奥に沈む余韻を抱えたまま、私たちは翌朝の搾乳へ向かうように眠りへ落ちていった。
朝靄の初搾り
夜明け前、私は真鍮色の鍵を手に、搾乳小屋の前へ立った。
雪を吸った木戸は、夜のあいだに重みを増している。私は外鍵の鍵穴へ鍵を差し込み、静かに回した。
――かちり。
錠が外れたのを確かめてから、私は重い木戸へ手を添えた。冷えきった板を内側へ押し開けると、干し草と乳脂の匂いが、眠っていた熱のようにこちらへ流れ出してきた。
拓実さんは毛布の中で眠っていた。薄手のTシャツと下着のパンツだけの身体は、毛布の下で小さく丸まっている。横顔には、まだ旅の疲れが残っている。けれど頬の色は戻り、唇にも血が差していた。外の吹雪がひと晩かけて彼を殺し損ねたのなら、今朝からは私たちが生かす。
私は肩へ手を置いた。
「起きられる?」
彼のまぶたが震えた。
「朝ですか」
「搾乳の時間」
その言葉を聞いた瞬間、彼の目に昨夜の囲炉裏端の記憶がよぎったようだった。乳粥の甘さ。私たちの視線。そして、薄い布の奥に隠しきれなかった男の反応。
彼は何も言わない。言わないことで、すでに認めている。
外では、雪が止んでいた。
戸板の隙間から差す朝の色は青白く、尾根の端だけが薄い朱を抱いている。美緒は先に奥へ入り、桶と鉄瓶を並べていた。私は木戸を閉め、内側の鍵穴へ鍵を差し込む。
――かちり。
内鍵が落ちると、干し草と乳脂の匂いが三人を包んだ。
拓実さんは辺りを見回した。
「牛は……」
「いないわ」
私は胸紐へ指をかける。
「ここで搾るのは、私たちだから」
結び目を解く。
厚手の布が肩から落ち、冷えた朝気へ乳房が晒された。冬の光を受けた肌に、乳輪の紅が浮かぶ。夜に搾っても、朝にはもう張っている。乳首の先には、呼吸だけで滲んだ乳が丸い滴になっていた。
拓実さんは言葉を失っていた。
視線は逸れかけ、また戻る。遠慮と欲望がせめぎ合い、男の喉がゆっくり鳴った。その正直さに、私の身体はさらに熱を作る。
美緒もシャツの釦を外した。
「昨日より張ってる」
妹は自分の乳房を抱え、笑う。
「拓実さんが近くにいるからかな」
彼は答えられない。
私は鉄瓶の前へ膝をつき、乳房を両手で支えた。根元からゆっくり押し上げる。乳腺が奥でほどけ、乳首が硬く震えた。
――ぽと……。
最初の一滴が鉄瓶へ落ちる。
その音で、朝が始まった。
私は親指と人差し指で乳首を摘まみ、根元から先へ圧を送る。
――ピュッ。
白い乳線が細く弧を描いた。鉄瓶の内側へ当たり、澄んだ音を立てる。美緒も隣で乳を搾り始める。二本、三本と白い線が朝靄の光を横切り、瓶の底へ温かな白濁を溜めていった。
「見るだけでいいの?」
私は拓実さんへ視線を向けた。
彼は壁際で固まっていた。下着のパンツの前が明らかに張っている。本人は毛布の端で隠そうとしているが、冷えた小屋の中でそこだけが熱を持ち、薄い布を押し上げていた。
「すみません」
「謝らないで。あなたの身体が反応すると、私の乳も出る」
言いながら乳首を強く搾る。
――シャッ……。
乳が勢いを増した。彼の目が見開かれる。私の乳房は彼の視線を受け、さらに張り、奥から熱い乳を押し出した。
「昨夜の粥も、これですか」
「ええ」
彼の顔に驚きと羞恥が混じる。
私は柔らかく笑った。
「もう、あなたの中へ入っている」
その言葉は、私自身をも濡らした。
乳を搾るたび、膣の奥がかすかに疼く。ラビアの内側へ熱が集まり、下着の布が湿りを帯びていく。搾乳はいつも乳房だけの作業ではない。乳首から出る白い線は、身体の奥で眠っている欲を引きずり出す。
拓実さんは息を呑んだ。
私は鉄瓶を置き、彼の前へ歩み寄る。
「手伝って」
「俺が?」
「昨日、言ったでしょう。何か手伝うって」
彼は迷いながらも頷いた。
私は自分の乳房を彼の手へ乗せた。
冷え切っていたはずの指は、今は熱かった。
手を貸す人
拓実さんの掌は、最初、力の入れ方を知らなかった。
触れていいのか、傷つけないのか、どこまで押せば乳が出るのか。迷いが指先に出ている。私はその手を上から包み、乳房の根元へ導いた。
「ここから押して。乳首だけ摘まんでも痛いだけ」
「はい」
「もっと、重みを持ち上げるように」
彼の指が乳肉へ沈む。
――むにゅ……。
乳房が押し上げられ、乳腺が反応した。乳首の先に白い滴が膨らむ。彼はそれを見つめたまま息を止めている。
「息まで止めなくていい」
「……すごい」
「何が?」
「温かい。生きているんだな、と」
その言葉は、下手な褒め言葉より深く胸へ触れた。
私は乳首を彼の指で挟ませる。
「今」
彼が力を込める。
――ピュッ。
乳が彼の手首へ飛んだ。白い滴が肌を濡らし、手の甲を伝って落ちる。
美緒が横で笑った。
「上手。姉さん、顔がゆるんでる」
「うるさい」
けれど確かに、私はゆるんでいた。男の手で搾られる感覚は、私たちだけで搾る時と違った。掌の厚み。指の節。加減を探る慎重さ。そのすべてが乳腺を刺激し、乳首の奥から甘い痺れを引き出してくる。
私は拓実さんの腕を掴み、乳首を彼の口元へ近づけた。
「飲んでみる?」
彼の視線が揺れる。
「いいんですか」
「欲しいなら」
答えの代わりに、彼は唇を開いた。
乳首が舌へ触れる。
――ちゅ……。
吸われた瞬間、背筋がしなるほどの刺激が走った。
「っ……」
私は声を飲み込めなかった。彼の舌先が乳輪をなぞり、硬くなった乳首を包む。吸引されるたび、乳腺がきゅうっと収縮し、乳が口内へ流れ込んでいく。
――じゅる……ごく……。
喉を通る音が近い。
その音に、膣口が濡れた。愛液が下着へ滲み、太腿の内側へ熱が降りていく。
「ん……上手」
私は彼の髪を撫でた。
彼は夢中で飲んでいる。昨夜の乳粥で遠回りに口へ運んだものを、今は私の身体から直接受け取っている。その変化が、私の欲望を静かに太らせた。
美緒が反対側から近づき、自分の乳房を彼の頬へ押し当てる。
「私のも、飲む?」
拓実さんは私の乳首を離し、息を乱した。
「そんなに飲んだら……」
「足りなくなる心配なら、ないよ」
美緒は乳房を根元から押し、彼の唇へ白い乳を散らした。
――ピュッ。
彼は反射的に舌を出し、その乳を受けた。美緒の身体が震える。
「ぁ……舌、熱い」
私はそれを見て、胸の奥へ嫉妬に似た火が点くのを感じた。
妹を守るために招いた男ではない。
私が先に見つけた。
私が戸を開けた。
私が、彼の旅を止めた。
私は彼の顎を取り、自分の方へ向けた。
「拓実さん」
「はい」
「ここでは、私の声を先に聞いて」
彼は濡れた唇で頷いた。
その素直さが危うい。危ういからこそ、深く沈めたくなる。
私は彼の手を取り、今度はエプロンの下、濡れた下着の上へ導いた。ラビアの輪郭を布越しに押さえられ、喉の奥から低い声が漏れる。
「私も、出てるの」
彼の指が固まった。
「遙香さん」
「乳だけじゃない。わかるでしょう」
拓実さんの息が乱れる。
その乱れを見て、私は確信した。
この朝は、まだ入口でしかない。
昼の沈黙
午前の搾乳が終わるころ、鉄瓶は乳で満ちていた。
私たちは保存瓶へ移し、布で口を縛る。拓実さんは手伝いながらも、何度も私たちの胸へ視線を戻した。濡れた乳首、搾り疲れて柔らかく垂れた乳房、乳の滴が乾きかけた乳輪。見てはいけないと知るほど、視線は正直になる。
昼近く、遠くで村の鐘が鳴った。
私は小屋の戸を閉め、内鍵をかけた。
拓実さんはその音に反応した。
「外へは出ない方がいいんですよね」
「今はね」
「俺がいることで、迷惑になるなら……」
「迷惑だけなら、戸を開けた夜に追い返していたわ」
言うと、彼は黙った。
美緒は干し草の上へ昼食を置いた。黒パン、塩漬けの根菜、朝の乳を温めた白湯。拓実さんはそれらを丁寧に食べた。旅の途中で食べ物を無駄にできなかった人の食べ方だった。
「あなたは、なぜ聞き書きを?」
私は尋ねた。
彼は白湯の椀を両手で包む。
「街にいると、自分が何を食べて、誰の手で生きているのか、見えなくなるんです。山の暮らしは厳しいけれど、火も食べ物も、身体と近い。そういう記録を残したかった」
「なら、ここはいい場所かもしれない」
「ええ。けれど、書いていいことと、書いてはいけないことがある」
彼は私の目を見た。
「今朝見たことは、あなたたちの許しなしに誰にも話しません」
美緒が笑みを消した。
私も椀を置いた。
「それだけでは足りない」
「どうすれば」
「今夜まで、ここにいて」
拓実さんの喉が動く。
「今夜まで?」
「朝に見て、昼に触れた。けれど、まだあなたは外へ戻るつもりでいる。私たちの乳を飲み、匂いを吸い、身体を熱くしても、心のどこかで旅人のまま」
私は彼の膝元へ近づいた。
「深夜まで、ここにいて。搾乳が終わるまで。私たちが何を守っているのか、最後まで見て」
彼はすぐには答えなかった。
私は待った。命を助けたことを理由に従わせるのは嫌だった。欲しいのは従順な遭難者ではない。自分で残る男だ。
小屋の中に、外から風の音が忍び込む。昼だというのに日差しは弱く、戸板の隙間から差す光は白く冷たい。
やがて、拓実さんが言った。
「深夜まで、残ります」
「怖くない?」
「怖いです」
正直な答えだった。
「でも、出ていく方が怖い」
私は胸の奥が満たされるのを感じた。
美緒が嬉しそうに、乳房を両腕で寄せる。張りは戻り始めている。午前に搾ったばかりなのに、彼の返事ひとつで乳首の先へ白い滴が灯った。
「姉さん、また出てきた」
「わかってる」
私は拓実さんの前で膝をついた。
「なら、昼のあいだは我慢して」
「何をですか」
「あなたの熱を、簡単に終わらせない」
私は彼のパンツの前へ手を置いた。
薄い布越しにも、陰茎が硬く張っているのがわかる。朝から何度も刺激され、けれど一度も解放されていない。亀頭の形がパンツへ浮き、根元の熱が掌へ伝わる。
彼の息が浅くなる。
「遙香さん」
「深夜までと言ったでしょう。欲は、育ててから搾るの」
美緒が小さく笑い、彼の背後へ回った。
「逃げられないね」
「逃げたいなら、今、言えばいい」
私は本気でそう告げた。
拓実さんは私の手を押しのけなかった。
「逃げません」
その返事で、私の乳房から一筋、白い乳が垂れた。
午後の搾乳台
午後、小屋の中は温まりすぎていた。
火鉢の炭は赤く、干し草は乳と汗の匂いを吸い始めている。戸板の向こうでは村の気配が遠く、時折、橇の鈴だけが雪の上を渡っていった。そのたび私たちは息を潜める。潜めた沈黙は、かえって身体の音を大きくした。
拓実さんの呼吸。
美緒の乳が布へ滲む音。
私の膣口から愛液が下着へ落ちる、湿った温み。
私は搾乳台代わりの低い腰掛けへ拓実さんを座らせた。毛布を肩から外すと、薄いTシャツと下着のパンツだけの姿が小屋の熱へ晒される。彼の手首を縛りはしない。ただ、両手を膝の上へ置かせる。
「動かないで」
「はい」
「触りたい時は、声に出して」
彼は喉を鳴らした。
「触りたいです」
私は返事を待つ前に、Tシャツの上から彼の胸へ指を置いた。薄い布越しに乳首の位置を探り、爪先で軽く弾く。
彼の肩が跳ねた。
「男の乳首も、こんなふうに反応するのね」
美緒が背後からTシャツの裾を少し捲り上げる。露わになった胸元へ唇を寄せ、硬くなった乳首を舌先でなぞった。
――ちゅ……。
拓実さんの膝の上で、両手がきつく握られる。パンツの前はさらに持ち上がり、前開きの布がいまにも割れそうに歪んでいた。
「触りたいなら、声に出して」
「触りたいです」
「どこに」
彼の視線が、私の乳房へ落ちる。
「遙香さんの胸に」
私はすでに露わになっていた乳房を、彼の視線の前へゆっくり差し出した。
朝に搾られた乳房は、昼を越えてまた張りを取り戻している。乳首は硬く、乳輪は熱を含んで濃くなっていた。彼の目がそこへ吸いつく。
「いい子」
私は彼の両手を取り、乳房へ押し当てた。
――むにゅ……。
掌が沈む。指が乳首へ近づく。彼は朝より上手くなっていた。根元から支え、重みを逃がさず、乳輪へ向けて圧を集める。
「ん……そう」
乳首から白い乳が溢れる。
――とろ……。
彼の親指を濡らした乳を、私は自分で舐め取った。
拓実さんの目が暗くなる。
次に私が膝を折り、彼のパンツの前へ顔を寄せると、彼の身体が大きく震えた。
「昼は我慢って……」
「終わらせないと言ったの。味見は別」
薄いパンツの前開きは、勃起した陰茎に押されて形を失っていた。亀頭の丸みが布を潜り、隙間から赤く濡れた先端だけが覗きかけている。
私は指先で前開きの布をゆっくり脇へずらした。
――ぬる……。
内側から、熱を持った陰茎が押し出される。亀頭は赤く濡れ、先端には透明な我慢汁が糸を引いていた。カリ首の縁に光る湿りを見た瞬間、私の舌の奥が疼く。
私は指先で亀頭を撫でた。
――ぬちゅ……。
彼の腰が跳ねる。
「まだ」
私は根元を握り、動きを止めた。
睾丸はすでに張り、袋の皮膚がきゅっと縮んでいる。手の中で男の身体が射精へ向かおうとするのがわかる。その流れを止め、戻し、また引き出すことに、私は自分でも驚くほどの愉しさを覚えた。
美緒は彼の背後へ回り、ゆるく羽織っていたシャツの前をゆっくり開いた。朝に搾られてなお張りを戻した乳房が、拓実さんの頬へ柔らかく押し当てられる。
「飲んで。姉さんに取られてばかりだと、私も寂しい」
拓実さんは口を開き、美緒の乳首を含んだ。
――じゅる……。
美緒の息が跳ねる。
「んっ……そう、もっと……」
私はその姿を見上げながら、亀頭へ舌を当てた。
――ちろ……。
我慢汁の苦い熱が舌先へ広がる。乳の甘さとは違う、男の身体の濃い味。私はゆっくりカリ首をなぞり、裏筋へ舌を這わせた。
拓実さんの乳を吸う動きが乱れる。
「遙香さん、駄目だ……出そう」
「まだ」
私は唇を離し、根元を強く握る。睾丸へ手を添え、熱のせり上がりを押さえた。
彼は荒く息を吐いた。
美緒が彼の耳元で囁く。
「深夜まで、育てるんだよ」
「そんなの……」
「できるわ」
私は亀頭へ軽く口づけた。
「私が見ているから」
その言葉に、彼の陰茎が手の中でさらに硬くなった。
午後の光が傾いていく。
私はパンツの前開きを戻さなかった。Tシャツも胸元まで捲れたまま、彼の乳首と陰茎を小屋の空気へ晒しておく。隠せないものを隠させないことも、昼の我慢の一部だった。
私たちはまだ終わらせない。乳を搾り、舌で湿らせ、寸前で止める。欲望は白い瓶へ貯まる乳のように、時間とともに重みを増していった。
夕暮れの谷間
夕暮れになると、小屋の隙間から入る光が赤くなった。
雪面に反射した薄紅が、干し草の上へ長い影を落とす。私は搾乳桶を片づけ、床へ厚い布を敷いた。美緒は拓実さんの背後へ座り、彼の肩を支える。午後いっぱい我慢させられた彼の陰茎は、すでに痛ましいほど硬かった。亀頭は濡れ、カリ首には透明な汁が幾筋も絡んでいる。
私はその前へ膝をついた。
「夕方の搾りは、胸で受ける」
彼は私の意味を理解し、息を呑んだ。
私は乳房を両手で寄せた。張りを残した柔肉が押し合い、深い谷間ができる。そこへ陰茎を挟み込むと、熱が乳房の内側へじわりと伝わった。
――むにゅ……。
拓実さんの喉から低い息が漏れる。
「遙香さん……」
「声を聞かせて」
私は乳房を上下させた。
――ぬちゅ……ぬちゅ……。
午後の間に塗り広げた乳と我慢汁で、谷間は滑らかに濡れていた。陰茎が柔らかな圧に包まれ、亀頭だけが谷間の上へ顔を出す。その先端を、私は舌で受け止めた。
――ちゅ……。
彼の腰が跳ねる。
美緒が後ろから、胸元まで捲れたTシャツの内側へ指を滑らせ、彼の乳首を摘まんだ。
「んっ……!」
「男の乳首も硬くなるんだね」
美緒の声は楽しげだった。薄い布の下から露わになった胸元で乳首を捻り、時折、爪の先で弾く。その刺激に合わせ、彼の陰茎が私の谷間で脈打つ。
「遙香さん、もう……」
「今度は止めない」
その一言で、彼の身体から力が抜けた。抑え込んでいた熱が一気に解かれようとしている。
私は乳房を強く寄せ、亀頭を唇で包んだ。
――ちゅぽ……。
舌先で先端を押した瞬間、睾丸がきゅっと持ち上がるのが見えた。
「くる……っ」
「出して」
私は胸を押し上げる。
――どくっ。
第一波が乳房の谷間へ弾けた。
熱い精液が白い肌へ飛び散り、乳首の下を伝う。彼の腰が震え、さらに二度、三度と脈打った。
――びゅっ……どぷっ……。
濃い白濁が乳房の間へ溜まり、乳と混ざって艶を増す。私はその温度を胸で受けながら、喉の奥で声を漏らした。
「熱い……」
美緒が身を乗り出し、私の胸へ落ちた精液を指で掬う。
「姉さん、きれい」
「味見する?」
「もちろん」
妹は指を舌へ乗せた。乳の甘みと精液の塩気を確かめるように、目を細める。私は自分の乳房へ残った白濁を舌で掬い、彼を見上げた。
拓実さんは荒い呼吸のまま、私たちを見ていた。
射精しても、欲は消えていない。むしろ放たれた分だけ、深い場所へ沈んだように見えた。身体の芯がまだ小さく痙攣し、亀頭の先に残った精液が滴になって揺れている。
私はその滴を舐めた。
――ぺろ……。
彼の背が震える。
「これで終わりではないわ」
美緒が彼の耳元で笑う。
「深夜まで、まだあるから」
彼は苦しそうに、けれど拒まない目で頷いた。
夕暮れの赤は、いつの間にか藍へ沈み始めていた。
宵の薄膜
宵になると、私は搾乳用のオイルを床へ垂らした。
灯りを受けた透明な液が、床板の上で薄い膜を作る。干し草の乾いた匂いに、乳脂、汗、精液の残り香が混ざっていた。小屋の中はもう、朝とは別の場所だった。作業場ではなく、三人の欲が時間をかけて湿らせた白い檻。
私は濡れた布で、拓実さんの胸元や腹に残った白濁を拭いた。Tシャツは胸まで捲れ、パンツの前開きからは、射精の後の陰茎がなお露わになっている。気怠さが彼のまぶたへ残っていた。それでも陰茎は完全には萎えない。私が指で亀頭を撫でるたび、根元からまた熱が戻ってくる。
「疲れた?」
「疲れました。でも……」
「でも?」
「まだ、欲しいです」
正直な声だった。
私は満たされた。
ただ抱かれるために、ここまで彼を導いたわけではない。何を見せ、何を止め、何を許し、どこで欲を解くか――朝から積み上げてきた熱の行き先は、私の手の中にあった。今度は、私の身体の奥へ招く番だった。
私は美緒と二人で、まず拓実さんのTシャツを脱がせた。汗と乳の匂いを吸った薄布が肩を抜け、胸も腹も完全に露わになる。つづいてパンツを腿から引き下ろすと、朝から布に押し込められていた陰茎と睾丸が、何にも遮られず小屋の灯りを受けた。
これから先は、布越しでは足りない。
私は自分の下着も脱いだ。
冷えた空気が濡れたラビアへ触れ、身体が震えた。膣口には愛液が溢れ、クリトリスはすでに硬く疼いている。美緒が後ろから私の乳房を持ち上げ、乳首を指でゆっくり転がした。
「姉さん、もう濡れてる」
「朝からよ」
私は拓実さんの前へ跨がった。
彼の陰茎を手に取り、亀頭を自分の膣口へ押し当てる。触れた瞬間、熱い先端が愛液で滑った。
――とろ……。
彼の息が止まる。
「入れていい?」
私は聞いた。
彼が私に聞くのではなく、私が彼へ問いかける。その順序が、今夜のすべてを決めている。
「はい。遙香さんが、欲しいです」
私は腰を沈めた。
――ぬぷっ……。
亀頭が膣口を割り、熱い陰茎が内側へ入ってくる。肉襞が押し広げられ、奥へ奥へと男の形を覚えていく。私は息を詰め、肩を震わせた。
「ぁ……入った……」
言葉にすると、快感が深くなる。
美緒が私の背中から乳首を揉み、耳元で囁く。
「姉さんの膣、締まってる。拓実さん、動けない顔してる」
拓実さんは本当に動けないでいた。私が腰を落としたまま、彼を奥まで咥え込んでいるからだ。陰茎の根元がラビアへ触れ、睾丸が私の肌へ当たる。内側では亀頭が膣奥を押し、そこから熱が全身へ広がっていた。
私はゆっくり腰を上げた。
――ぬちゅ……。
膣壁が陰茎を離すまいと絡みつく。
また沈む。
――ずぷっ……。
「んっ……」
美緒の指がクリトリスへ伸びた。濡れた指腹で小さく円を描かれ、私は声を堪えきれなかった。
「はぁ……そこ、やめないで」
「やめない」
妹の声は甘い。
拓実さんの両手が私の腰へ添えられる。強く掴まれるのではなく、私の動きに合わせて支える。私はそれを許した。彼の指が腰骨を辿り、乳房へ伸びる。張った乳を持ち上げ、乳首を摘ままれた瞬間、膣がきゅっと締まった。
「っ……!」
彼が呻く。
「遙香さん、締まる……」
「乳首、もっと」
彼は指に力を込めた。
――くにゅ……。
乳首を捻られた刺激が、膣奥まで落ちた。私は腰を速める。陰茎が肉襞を擦り上げ、亀頭が奥を叩くたび、愛液が溢れて音を立てる。
――ぱちゅ……ぱちゅっ……。
美緒が私の肩越しに拓実さんへ口づけた。二人の唇が触れ、すぐに離れる。妹はそこで満足せず、私の乳房へ顔を埋め、乳首を吸った。
――ちゅぷ……。
「ぁっ……」
膣がさらに痙攣する。
乳を吸われながら、クリトリスを撫でられ、膣奥には拓実さんの陰茎が深く入っている。朝から育ててきた欲望が、ひとつの線になって腰の奥へ集まった。
「私、逝く……」
私は彼の肩へ爪を立てた。
「中で受け止めて。逃げないで」
「はい……っ」
美緒の指がクリトリスを強く擦る。
乳首を吸われる。
亀頭が膣奥へ当たる。
次の瞬間、身体の芯が白く弾けた。
「ぁぁ……っ、ん、んんっ……!」
膣壁が陰茎を締め上げ、勝手に波打つ。愛液が溢れ、逝き潮のように彼の腹へ散った。私は腰を止められず、絶頂の震えに合わせて彼を何度も奥へ呑み込んだ。
拓実さんの睾丸が硬く引き締まるのが、内側でわかった。
「出る……中に」
「出して」
私は彼の耳元で告げた。
「私の中へ、全部」
彼の腰が深く突き上がる。
――どくっ……。
熱い精液が膣奥へ注がれた。
脈打つたび、腹の内側が熱で満たされる。私は動かず、その奔流を受け止めた。逃がさないように膣口を締め、奥へ抱え込む。
「ん……まだ、出てる……」
彼は震えていた。
私は彼の首筋へ唇を当てた。
「これが欲しかったの」
美緒が私の背中を撫でた。
外では、夜が完全に落ちていた。
深夜まで、あとわずかだった。
閉じる雪檻
深夜の搾乳小屋には、音が残る。
火鉢の炭が崩れる音。
瓶の中で乳が揺れる音。
濡れた布を絞る音。
そして、果てた後の身体が、まだ互いを求めて息をする音。
私は拓実さんの胸に頬を置いていた。彼の鼓動は遅くなりかけているが、眠りには落ちていない。美緒は隣で保存瓶の口を縛り、最後の乳を棚へ並べている。今日一日で、瓶は例年の数日分ほど満ちた。彼がいたからだ。彼が見て、触れ、飲み、欲しがり、注いだから、私たちの身体は冬へ逆らうほど乳を作った。
私は身を起こした。
膣口から、彼の精液がゆっくり零れる。太腿を伝う熱を指で受け、乳首へ塗った。白濁が乳輪へ絡み、そこへ残っていた乳と混ざる。
美緒がこちらを見た。
「姉さん、まだ飲ませる?」
「最後にね」
私は拓実さんの唇へ乳首を差し出した。
彼は疲れきった目で私を見上げる。
「飲める?」
「飲みます」
その返事に、胸の奥が疼いた。
彼の舌が乳首へ触れる。
――ちゅ……。
弱い吸い方だった。けれど、その弱さが深夜に似合っていた。朝の驚きも、昼の我慢も、夕方の放出も、宵の結合も越えた後の吸い方。欲望の火が燃え尽きた灰の下で、まだ赤く残っている。
乳が彼の口へ流れる。
私の中に残った精液の熱と、乳房から出る乳の温みが、同じ身体の中で交差する。女の身体は、受け取り、作り、与える。その循環を、今日は初めて誰かと最後まで分け合った。
拓実さんが乳首を離した。
「遙香さん……」
かすれた声が、私の胸元へ落ちる。
「なに」
「もう、何も考えられない」
その言葉に、私は笑わなかった。
笑えば、この深夜の静けさを壊してしまいそうだったから。
「考えなくていいわ。今夜は眠って」
私は濡れた布で彼の唇を拭い、髪を撫でた。美緒は棚へ保存瓶を並べ終えると、搾乳桶を抱えたまま、戸口のそばに立つ。小屋の中には、乳脂の甘さと、干し草の湿りと、燃え尽きた欲の余熱だけが残っていた。
拓実さんの瞼が重く落ちていく。
彼は何度か眠りに抗うように瞬きをした。けれど、今日一日かけて身体の奥まで満たされた疲労は、もう彼を離さない。
「……明日の朝も」
言葉の続きを聞く前に、彼の呼吸が深くなった。
穏やかな寝息だった。
私はしばらく、その横顔を見つめていた。雪山を越えてきた旅人の顔ではない。乳の匂いに包まれ、私たちの小屋の暗がりへ沈んでいく、まだ何も知らない男の顔だった。
「姉さん」
美緒が小さく呼んだ。
その声には、昼間の甘さとは別の静けさがあった。
「行こう」
「ええ」
私は毛布を引き上げ、拓実さんの肩まで丁寧に掛けた。彼の指先がわずかに動いたけれど、目は開かない。胸の上下はゆっくりで、深夜の小屋に馴染むほど安らかだった。
彼が完全に眠ったのを確かめてから、私は下着を身につけ、胸布を結び直した。美緒も黙ってシャツを羽織る。肌に残った熱だけは、布の下へ戻してもまだ消えなかった。
美緒は棚の端に置いてあった真鍮色の鍵を取った。
そして、昼から閉めていた内鍵の鍵穴へ、それを差し込む。
――かちり。
小さな金属音が、小屋の内側でひどく澄んで響いた。
錠が外れると、戸の合わせ目から雪の冷気が細く入り込んだ。乳と熱で満ちていた空気が、そこで初めて外の夜を思い出す。
美緒が先に外へ出る。
搾乳桶を抱えた背中が、雪明かりに白く縁取られた。
私も保存瓶を入れた籠を腕に掛け、戸口をまたいだ。最後に一度だけ振り返る。拓実さんは干し草の寝床で眠っていた。毛布の端から覗く横顔は穏やかで、戸が開いたことにも気づいていない。
「おやすみ、拓実さん」
返事はない。
ただ、彼の寝息だけが、薄暗い小屋の奥で静かに続いていた。
私は小屋から出て、木戸を引いた。
――ぎぃ……。
重い木戸が噛み合い、細く差し込んでいた雪明かりが閉ざされる。
私は外鍵の鍵穴へ真鍮の鍵を差し込み、ゆっくり回した。
――かちゃり。
深夜の雪山に、その音は思いのほか小さく沈んだ。
美緒が私の隣で息を吐く。
白い吐息が重なり、すぐに闇へほどけた。
「これで、朝まで大丈夫ね」
「ええ」
私は鍵を抜き、掌の中へ収めた。
扉の向こうでは、拓実さんがまだ眠っている。
母屋の灯りは遠い。村の気配もない。雪は音を奪い、山はただ白く、私たちだけの秘密を抱え込んでいた。
今日一日で、欲望は果てた。
けれど果てた場所に、次の朝の乳がもう満ち始めている。
私は胸の奥で疼く乳腺を感じながら、閉ざされた扉へそっと手を置いた。
「この冬は、もう寂しくないわ」
真鍮の鍵が、私の掌で冷たく光っていた。