憧れと欲望
美月と大樹は同じ日に生まれた双子の兄妹。幼い頃から何をするにも一緒で、高校3年生になった今も、二人はお互いをよく理解し合っていた。美月にとって、兄の大樹はただの家族ではなく、理想を体現した存在だった。サッカーに打ち込む彼の真剣な眼差しや、汗にまみれた姿を見るたびに、美月の心は誇らしく熱くなるのだった。
学校でも人気者の大樹は、サッカー部のエースとして試合で輝く存在で、多くの女子が彼に憧れを抱いていた。しかし、大樹は誰とも交際せず、ただひたむきにサッカーへ打ち込んでいた。そのまっすぐな姿に、美月も自然と惹かれていた。
そんな大樹への尊敬と憧れは、彼女の心の奥で特別な感情へと変わり始めていた。「私だけが知っている兄」——それは、近くで見てきた彼の真剣な表情や努力する姿、誰にも見せない素の部分を知るからこそ抱くことのできる、特別なものだった。言葉にせずとも感じることのできる強い絆は、二人の間に確かに存在していた。
その絆は、いつしか美月の中で静かに、けれど確実に、別の形へと変わり始めていたのだった。